shidouofthedeadの日記

日々の雑文帳

セイギノミカタ

幼稚園の頃、先生に「おおきくなったらなにになりたい?」と聞かれ、本気で「おひめさま!」といってドン引きされた女だ。
幼稚園児の言うことだ。先生もそんなにドン引きすることもなかろうにと今だったら思ったりもするのだけど、これだけ幼子の目にも違和感を強烈に残しているのだから先生にも相当何かがあったのかもしれない。
顔を引きつらせながら「きれいなドレス着られるものね」と笑っていた。ずっと覚えている。

お姫様になりたかったとはいえ、王子様には憧れてなかった。
白馬の王子様が迎えに来てくれるという願望はなかった。
自分には王子様は見向いてくれない。なぜか幼い頃からそう思ってた。
吸血鬼には襲われてもいいな。なんて考える子どもだった。
魔女っ子メグちゃんよりノンちゃんの方が好きだった。
正義の味方よりも倒される怪獣のことをいつも考えていた。昔から拗れた子どもだった。

優等生だったけれども正義の味方ではなかった。
自分のことに精一杯だった。
人のことなんてどうでも良かった。
ばかまじめに生きることだけに必死だった。

品行方正な女の子になんのキラキラした魅力も生まれることもなく、望まなかった王子様はやはり現れることなく、四半世紀過ぎていき、やっと「なんか違うんじゃないか?」と気付きそこから急に轍を大きく踏み外した。ばけものと出会い、家を飛び出した。
ばけものに殺されかけて、死にかけて黄色い朝を迎えたこともあった。
ばけものから逃げ出してゾンビ同士が出会って現在に至る……って感じだ。

そんな道を歩んできて、私は少しずつ意識してばかまじめを捨てた。
根本のばかまじめは拭い去ることはできないけれども
品行方正であろうと思うことはやめた。
とても楽になった。
だから、人にもそれは求めない。
正しい正しくないは明確には決められない。
正義は定義できない。王子様は現れない。
たとえ隣にいるのが吸血鬼でもバケモノでもゾンビでも私は別に構わない。ただ、隣にいてくれるなら、寄り添っていてくれるなら、伴走してくれるなら、笑い合えたなら、たとえその後、笑顔のままトドメを刺されても別に構わない。
むしろ、笑顔でトドメを刺してくるそんな人を私は愛する。