shidouofthedeadの日記

日々の雑文帳

BBA

オバサンという言葉に抵抗がある。息子が幼い頃、キレイめなママさんが自らオバチャンと呼んでいるのがとても嫌だった。自分を貶めてどうする? というのと、そう言ってそんなことないって言われるのがわかっててるから言えることなんだと穿ってた。
半世紀生きて、立派にオバサンといわれても仕方ない歳に容姿になった今でもその言葉にチクチク苛まれている。
言葉が身体を作っている。
言葉に姿が追い込まれていく。
言葉で諦めている。
毎日毎日、「オバチャン」と呼ばれることで私は抵抗に疲れ果て、
チクチク感じながらも迎合してる。
それもあって、数年前はあまり外にも出たくなかった。この荒屋で醜く朽ち果てていくなら婆になるのも構わないと思ってた。
一度そうなると戻るのも難しい。
昔からの自信のなさもプラスされる。
誰からも褒められることなく
キモいと言われた思い出だけが心の隅に残り、自己肯定感低いままここまで来た。いくら頑張ってもどこか引っかかる。どこか気後れする。どうせ私なんてとなる。


人の目を気にするなと言われても
人の目で見てもらわないと自分はどうなのかわからない。
言葉で返ってこないと
本当にこれでいいのかわからない。
変に勘繰ってしまう。
変に慮ってしまう。
変に納得してしまう。


どんなことに対しても。


誰も私のことなんか見てないんぢゃないか。

見えてないんぢゃないか。
私自身も、私の言葉も
誰にも届いていないのではないか。


虚しさだけが残る。
今朝からずっと泣いている。

 

 

 

 

ひとり花一匁

祭囃子に耳を塞ぎ闇夜にひとり
花一匁


何も欲しがらず
誰も欲しがらず
見上げる遠い日の花火


パッと咲いて
散って
灰に


書いて消して
愛に蓋をする


瞳を閉じて
君を想うのか
恋は盲目
何も見えぬのか


後ろの正面
影法師も消え
鉄格子の籠
翼飛び立つ


丑三つ時の墨染めは
オートリバースで


暗中模索に進む三途の川
賽の河原に積む石は冷たく


あの子じゃわからん
この子じゃわからん


あの子になれなかった私は
誰にもなれなかった私


かりそめのよは終わり
聴こえてくるのはただあなたの声


後の祭りの面影すらなく
泣き濡れた頬を掌で覆う

 

 

白昼夢

糸車廻り
針刺した白い指
毒回り眠る
茨巡る城


おだまきの
赤い糸絡みほどくことなく
程なく紅染まる夕暮れ


瞳と瞳が合って
指が触れ合うその時
忘れないと誓ったあの日の夜は遠く


ノンレムの森
乗れず彷徨う
馬車の轍
夢見ることなく
進む煙る道


浅い眠りにさすらいながら
甘いエグ味を懐かしむ舌


骨まで溶けるアラビアンナイト
魔法が解けたらアザミの庵 
毎度


最後はもっと私を見て


縋る思いも空を切り
打ち破られた朝露の蜘蛛の巣


叫べども声は届くことなく
白む空に映ゆる
影だけが私のもの

 


漆黒の眼(まなこ)
眩い朝焼けに
閃光宿って我が身仄めく

教室の片隅で見た夢

教室の片隅で見た夢
私は違うんだ見下ろしてた
気付けばみんなから見下されてた
入らなかった輪の中
罠か
今もまた同じ

鏡には映らない
映えない姿
ことばも得ず
萌えない気持ち

高熱出ぬ限り
日々の家事
ルーティン回し
なんなら天晴れ
洗濯機を
も一度回す

教室を飛び出し
社会を逃げ出し
やっとカルマを解脱
ママ友を脱落

謝恩会 高層ホテル
ガラス張り 
透明な壁の花

いつまでも
あの日の教室を抜け出せず
どこまでも咳をしてもひとり

仮想現実の渦潮の中では
器用に泳いだつもりでいたジュゴン
リアルもフェイクと言われ
さんざめくローレライの歌声
水面を眺め
みなとも別れ
泡と涙

正体隠し
生涯を亡くし
気付けばまた蚊帳の外
業火の中と外
抜け出せぬカルタ取り

教室の片隅で見た夢
入れなかった輪の中
今もまだ同じ

カイロの紫のバラ

スクリーンから抜け出した彼は
ニュースキャスターでパパの
2way nice guy

 

そそってそそられて
誘って誘われて
Oneway Generation
この命燃やすよ

 

カイロの紫のバラ
帰ろう歌いながら

 

色なしで
意図なしで
自己暗示
以降安心


使いものにならぬ
プライドに縛られたら
辛いぞ


つまりもう 妻とヒモ
そそってそそられて
誘って誘われて
堕ちていく回廊


スクリーンから抜け出した彼が

私の元に舞い降りる筈もなく


イバラの道踏み散らして
レールの向こう側に
刻みつけるこの轍


待てど暮らせど日和などなく
カイロの紫のバラ
帰ろう歌いながら

 

蝙蝠

蝙蝠

アカシアの雨に打たれて消えた人魚
にわか雨に開くコウモリ
弾む雨だれ刻みながら
手練れに囲まれ
声を失い
手に入れた足で蹴る言の葉
時の濁流引き摺り込まれ
もがく間も無く
鼓膜に響き
自分語りも許されぬ回想
泡沫(うたかた)にまじり
爆ぜた呪文
たゆたい見るうつつに
私は跡形もなく
どっちつかずで
跳ぶことのできなかった
焚き火の炎を
今はただ眺めているだけ

腹黒な優等生

人並みに溺れる恋愛もせず
一夜一夜に人を見殺し
無事残酷にも逢瀬なし

外付けのスチール階段
カランコロンと響く
愛しい靴音

畜生道に堕ちてうごめき
掛け違えたボタンとうとう

阿婆擦れになれずスマイル
腹黒の優等生
裏腹な感情で起き抜けに抜け駆け

見上げた黄色い太陽

35階から見たビールの泡
29階への非常階段 聞こえてきた津波警報

天空の城から見下ろす世界は
何もかも遮断され
デジタルに季節が流れた

地に足を踏ん張る生活
あばら屋で雨音が刻むビートは
アナログに屋根を打ち続け
庭先を彩る牡丹は
老いた私にはまばゆすぎて

腹黒の優等生は抜け駆けの一歩で
足抜けできぬまま
人並みに溺れず
人の世に生殺しのまま
紫の芍薬を手折り
あの日の阿婆擦れに手向け
ただただ立ち尽くしている