shidouofthedeadの日記

日々の雑文帳

フレンドリー

「あなたは私が白いものを黒いと言ったらずっと、黒いと言い続けてくれる人だと思っていた」
「姥皮」のモデルになった旧友が私と金輪際のお別れの前に最後に言ったことばである。
当時、私は彼女が何を言っているのか理解できなかった。白いものは白いと訂正して指摘してあげるのが友情であり優しさであるのではないか。愛なのではないか。
私にはそのことばが彼女の我が儘であり、私への冒涜ではないかと思っていた。
でも、今の私ならわかる。彼女は私にずっと寄り添っていて欲しかったのだ。
正しいことばなんていらなかったんだ。ただ隣で「白いね。白く見えるね」と言い続けて欲しかったのだ。甘えには変わりない。でも、弱っていた彼女が欲しかったのは真実なんかではなく自分を肯定することばだった。それに気付かず、私は自分の正しさを貫くことだけを考えていた。彼女の気持ちを考えずにただ自分が正しくいたいだけだったのだ。

年を取れば取るほど褒められることは少なくなる。自分を肯定してくれる人は少なくなる。自分が正しいのか正しくないのかわからなくなっていく。いや、正しいも正しくないもないのだ。世の中は一面から見れば正しいけど、もう片面からみたら正しくないと思えることばかりだ。白も黒もなくグレー。グレーでいいのだ。だから、彼女から見えてる世界をただ静かに寄り添って聞いていればよかったのだ。……今の私がそれを望んでいる様に。

ただ隣にいてくれるだけでいいのだ。
向き合ってなくてもいい、ただ、隣に並んで「そんなことがあったんだ」と聴いてくれるだけでいいのだ。正して欲しいなんて思ってないんだ。間違っているというのは否定されていることと同じだ。で、正しいってなに?

あれ以来、彼女には会ってない。
アングラ劇団の舞台に立ち続けているのだろうか?
相変わらず恋多き女を続けているのだろうか?
夢見ていたフランスでの生活を手に入れたのだろうか?
東京で暮らしているのだろうか?
故郷の九州に帰って暮らしているのだろうか?
時々、彼女が夢に出てきて私は彼女と再会を喜び隣で話を聞き続けている。

由里ちゃん、お元気ですか?
私は隣の席を空けたまま
相変わらず迷いながらグレーの世界で生きています。