shidouofthedeadの日記

日々の雑文帳

キレイ

キレイとは縁遠い人生を送ってきた。母は華美を嫌う人だった。流行の服は着せてもらえなかったし
自らも普段から化粧をしない人だったので成人するまで化粧なんてもっての外だった。娘が女の身体に成長していくのが汚らわしく、ふしだらだと罵った。大きい胸が目立たぬ服を着せられ、その癖、変なクルクルパーマをかけられた幼少期が未だに謎だ。親に容姿も褒められたこともなく、コンプレックスばかり植え付けられた。
未だに化粧の仕方がよくわからない。アイラインの入れ方も口紅の輪郭の取り方もよくわからないでしているところがある。
イベントホールの受付事務をしてた時、ギョーカイ(多分、演歌系)のおっさんに「変な化粧の仕方してないでちゃんと勉強しろ! 気持ち悪い」と言われたこともあった。腹が立ったけど何でそんなこと言われにゃならなかったのかわからない。
でも、人生で何度もこの言葉は投げかけられたのでああ、私はそういう女なんだろうなとだけは思ってた。

この歳になって、YouTube万歳!インスタ万歳!で何となく化粧のやり方を流し見してる。こんな気の遠くなる様な努力をしてたのかと今更ながら感心してる。


年頃になって、家に女友だちが遊びにくると母は「あの子は女優さんだから化粧が垢抜けてる」とか「あの子は流行に敏感だから」と褒めてる様でどこか下世話な目で私に言った。自分が作った芋娘と見比べてた。それに反発することを覚え、男好きされない方向へ向かって私は走っていった。自分のスタイルを確立して行った。スタイルなのかは定かでないけど。それがあったから今の私があるわけで。
男好きしそうな化粧をしたら、お付き合いしてた相手に「似合わないからやめた方が良い」と言われた。
正解なんかないけど何が正解なのかホントわからなかった。


息子がまだ幼かった頃、一度だけ父と母と妹と息子と私で北海道へ旅行したことがあった。子育て中だからそうたいした化粧もしてなかった。
部屋を案内してくれた中居さんが
「あら、お嬢さん、おキレイ!女優さんみたい」と言い出した。お嬢さん? どこ? と見回したら私の方を見てた「は?」となってたらすかさず母が「ええ、うちの子キレイなんですよ。よく言われます」と自分の手柄の様にご機嫌に返していて「は?はぁ?は?」とあっけに取られたのを今でも思い出す。


我が子を「キレイ」から遠ざけていた人が我が子の「キレイ」を自分の手柄にしている。なんだこれ。


飾らない美しさとか言いたかったのだろうか? でも、それは心の中から出てくるもので、その芽を潰して歩いていたことに母はまるで無自覚だ。


それは、あなたの手柄でなく娘が自らもがいて掴み取ってきたものなのではないだろうか。


未だに私は自分のことをキレイだとは思わない。でも嫌いではなくキモいとも言わなくなった。


キレイってなんなんだろう
わからない。